介護施設を探す前に!介護保険制度について理解する
2022.03.06介護の基礎知識
現在、高齢化社会と言われる日本では先進的に介護医療が進められており、そのお陰か年々寿命が伸びているとされています。ですが、一方で慢性的になっているのが一人介護です。中にはそのストレスから介助者自身が病気になってしまうケースも多々あります。 今回はそんな方の強い味方になってくれる介護施設を探す前に、必ず知っておくべき制度である【介護保険制度】について詳しく解説していきます。
介護保険とは
介護保険は国民全員が利用可能な制度で、40歳以上が被保険者となります。
介護が必要と判断された方々はもちろん、その介助者も有料老人ホームや介護施設を利用しやすくする為の制度です。
疾病や老化によって介護が必要になってしまうと認定されることで、対象の機関を利用するにあたって費用に保険が適用されます。
年々寿命が長くなっていますが、経済の主軸となる世代が少ない今、これからの生活には欠かせない制度となるでしょう。
被保険者
前述したように、満40歳から介護保険の支払い義務が適用されます。
介助者やその家族、介護者本人を社会全体で支える目的があり、この被保険者である40歳から一生支払いの義務が発生します。
ですが、逆の立場になった場合は一生利用できる保険です。
納める金額
これは年齢により【第1号被保険者】と【第2号被保険者】で区分されています。
人口比率により金額が3年ごとに変更されるので、『〇〇の仕事だから幾ら』や『年収が〇〇だから幾ら』ということで一生固定される事はありません。
直近の比率は第1号被保険者が23%、第2号被保険者が27%、残りの50%は国が負担することになっていました。(2018年から2020年の3年間)
また、お住まいの地域や自治体、加入している健康保険組合、第1号と第2号で計算方法が異なる為、個人個人で金額の差が発生する様になっています。
第1号被保険者とは
第1号被保険者と呼ばれるのは、【65歳以上の国民】に該当します。
自治体や世帯収入、本人収入により支払基準額の差が発生しますが、全9段階に分けて区分されます。
-
・世帯全員が市町村民税非課税、年金受給者
・世帯全員が市町村民税非課税、年金+収入合わせて年収80万円以下
・生活保護受給者
…基準価額×0.3
-
・世帯全員が市町村民税非課税、年金+収入合わせて年収80〜120万円
…基準価額×0.5
-
・世帯全員が市町村民税非課税、年金+収入合わせて120万円以上
…基準価額×0.7
-
・本人以外に課税者と同居し、年金+収入合わせて80万円以下
…基準価額×0.9
-
・本人以外に課税者と同居し、年金+収入合わせて80万円以上
…基準価額×1.0
-
・市町村民税課税者で、年金+収入合わせて120万円以下
…基準価額×1.2
-
・市町村民税課税者で、年金+収入合わせて120〜190万円
…基準価額×1.3
-
・市町村民税課税者で、年金+収入合わせて190〜290
…基準価額×1.5
-
・市町村民税課税者で、年金+収入合わせて290万円以上
…基準価額×1.7
ポイントは【非課税者でも年金と収入を合わせた年収】によって保険料率が変化する事ですが、あくまで自治体での判断となります。
例えば、【人口は少ないが、要介護認定されている人がほぼいない地域】と【人口は少ないが、要介護認定されている人もそれなりにいる地域】【人口は少ないが、要介護認定されている人が多い地域】では、前者の方が保険料は安くなります。
国内でも北海道 音威子府村は月3,000円程度ですが、福島県葛尾村では月9,800円とされています。共通するのは【人口が少ない】という点ですが、福島県葛尾村の方が【要介護認定されている人が多い】という事がわかります。
また、大阪府の様に【人口が多い都市】は必然的に【要介護認定者は多い】という事が言えますので、第1号被保険者の基準価額は月2,833円〜18,616円となり、支払う保険料も約6倍まで変動します。
第2号被保険者とは
一方の第2号被保険者とは、40歳から64歳までの支払い義務が発生する国民全体を指します。
大きく分類すると3つの種類になり、自身が加入している保険によって価格は変動します。
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職場の健康保険に加入している場合
介護保険量は事業主と被保険者で50%ずつ負担されます。給与と各医療保険で設定される介護保険料率で負担額が決定するので、個人個人で金額に差はでてくるでしょう。協会けんぽでは毎年介護保険料の見直しを行なっていますが、45歳から60歳の被扶養者の介護保険料は、【被保険者の支払う介護保険料で賄われている】ので、個人個人で支払いが発生する事はありません。
-
地域ごとの国民健康保険に加入している場合
これは【保険者=各市町村】という考え方の保険となり、個人個人て負担するものではなく、【各世帯】によって負担額が決まります。国民健康保険加入者がいる世帯の【所得、資産、人数】などの項目ごとに金額・割合が決定され、その金額・割合も各市町村ごとに変動しています。
また、世帯主本人が国民健康保険に加入していない場合でも、世帯内に40歳〜65歳未満の加入者がいれば世帯主に支払い義務が発生する仕組みとなります。これは、国民健康保険自体に【扶養】という概念が存在しない事から発生する仕組みです。
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職業ごとに分類される国民健康保険組合に加入している場合
これは医師や理容美容業、建設業などに携わる人が加入する保険組合です。各組合ごとに規約で保険料が決まっており、基本的には給与から差し引かれます。
介護保険が適用される人
介護保険が適用されるのは、【特定疾病】が発症した方となります。心身の病的加齢と医学的に関係があるとされている場合のみ該当する為、交通事故などでの後遺症を発症した場合は適用されないケースもあります。
また、40歳〜65歳未満に発症ケースが多く、きちんと医学的概念で説明できる場合のみ、その年齢以下の発症でも適用されます。
・がん(医学的に回復見込みがないと判断された場合のみ適用)
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症
・後縦靭帯骨化症
・骨粗鬆症(骨折を伴う場合のみ適用)
・認知症(初老期の場合のみ適用)
・パーキンソン病関連疾患
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症
・多系統萎縮症
・糖尿病における神経障害、腎症、網膜症
・閉鎖性動脈硬化症
・慢性閉鎖性肺疾患
・変形性関節症(両膝または股関節のみ適用)
現在の特定疾病は上記の場合のみとなります。
かなり枠が狭く、がん患者でも回復見込みがない場合のみや、変形性関節症でも膝または股関節に発症した場合のみとなるなど、他の箇所で同じ疾病が発症したとしても適用されないケースもある為、介護保険を利用する前には病院で正確な【診断と病名】をいただく必要があります。
要介護認定はどのように行われるのか
現在、要介護認定を選別するのは、全てコンピュータによる自動選別が一般的で、一次判定と二次判定で選別されます。
判断基準は主に【介護サービスの必要性の高さ】により決められます。
例えば、
- 認知症だが、身体的には問題ない
- 認知症で、寝たきり
の場合は①は徘徊などのリスクがあり、介助者にも負担が大きいとされていますが、②は徘徊のリスクがない為、必要性は低いと判断されてしまいます。
ですが、実際のところは寝たきりの介助者の方が負担が大きく、この判断基準を見直す必要があるのではないと議論されているのも事実です。
一次判定で必要と判断された場合、二次判定に移行します。
二次判定は主に保健医療福祉の学識経験者が【介護にかかる時間】の推計を算出したデータを元に【要支援(1~2)、要介護〇(1~5)】で判断します。
予防給付対象者とは
前述した要介護認定の内、【要支援1〜2】と判断された場合、介護保険とは別な給付を受ける事が可能です。これは、要支援1に該当する全員と、要介護2にあたる【要介護認定基準時間(介護に要する時間)が32分以上50分未満の方】を対象としています。
例えば、心疾患などで【急激に容態が悪化する可能性の高い場合】には要介護判定はできませんが、医療サービスの利用を優先すべきという事で、この給付を受けられるという事です。
また、認知症などで十分な説明を行っても理解出来ない方やサービスを受ける上での制約などを理解していただけない場合にもこの対象となります。
利用できるサービス
大きく括ると【老人ホームやケアサービス】となりますが、かなり細かく分類されるので注意が必要です。
施設サービス
主に【特別養護老人ホーム、介護老人保護施設、介護療養型医療施設】が該当します。
自宅での介護が難しい場合には施設で安全に生活して頂ける環境が整っています。専任の介護福祉士が常駐しており、常に周りには人がいるのでご家族も安心して依頼できるサービスです。
居宅サービス
主に【訪問介護、訪問看護、短期入所】がこれに該当します。
自宅での介護をご希望されたとしても、お仕事の関係上毎日介護する事ができない場合や、お一人で生活している高齢者の方に向いているサービスです。
地域密着型サービス
こちらは【随時対応型、緊急対応型】となっています。中でも特筆すべきは夜間対応も可能であるというところです。夜間や休日にはかかりつけの病院が休院している場合もあるので、きちんとした地域密着型のサービスを利用しておけばスムーズに対応して頂けます。
上記3つが【介護給付】で利用できるサービスです。
介護予防サービス
主に【通所リハビリ、居宅療養管理指導】が該当します。
あくまでも身体は健康ですが、万が一に備える為のサービスと言えるでしょう。在宅介護を実施するにあたっての介護者の管理方法などを指導して頂ければ、介助者も一人で介護しているのではないという精神的な安定を確保する事ができます。
地域密着型の介護予防サービス
こちらは介護予防の中でも比較的自立している方に向けたサービスで、主に【認知症対応型、在宅介護予防】に特化しています。地域単位での利用が可能なので、近所付き合いがあまり得意でない方でも安心して利用する事ができます。
上記2つが【予防給付】で利用できるサービスです。
まとめ
介護サービスを受ける前にしっかりとご家族間で話し合い、適正なサービスを利用する事が望ましいとされていますが、希望する施設などの状況により利用できない場合もあります。
事前に介護保険制度を把握しておく事で、自身が将来的に住む場所などの選択肢も広がるでしょう。