特別養護老人ホームのサービス内容と他の介護施設との違いを紹介
2022.05.17介護の基礎知識
現在、老人ホームと呼ばれる施設の中でも特に人気が高く、入居するまでに時間を要する場合や空きがない状態が続いています。今回は特別養護老人ホームの人気の理由や費用、全国各地にあるおすすめの施設などをご紹介します。
特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホームは老人ホームの中でも介護度が高い方を優先的に受け入れている施設となり、設備や医療体制も徹底している施設がほとんどです。
運営は国や地方自治体、社会福祉法人などが行なっており、【公的施設】に分類されます。
都市部では入居待機している方がいる一方、郊外にも都市部同等の施設数があるため、比較的待機者は少ないのが現状です。
入居対象者
入居できる基準は従来の老人ホームよりも厳しく、【原則65歳以上で要介護3以上】【40歳以上で特定疾患を有し、要介護3以上】【要介護1または2で特例的な人】だけが入居できます。
これは、全国的な要介護者の増加に伴い2015年に法改正が行われた為ですが、この法改正前は約50万人入居していた特別養護老人ホームの入居者を30万人以下にする事が可能となり、入居対象者を絞る事でより入居待機期間の減少が可能となりました。
入居期間
基本的には要介護度が高く、高齢者のみを入居対象としている為、入居期間はありません。
中には【終の住処】として特別養護老人ホームを選択する方も多いようです。
特別養護老人ホームの分類
特別養護老人ホームは3種類の型に分類されます。
- 広域型特別養護老人ホーム
- 密着型特別養護老人ホーム
- サポート型特別養護老人ホーム
まず、1の【広域型】は全国どこの居住区からでも、施設入居の応募が可能です。
一般的に【特別養護老人ホーム=広域型】という解釈が多く、入居可能な人数が30人以上の施設を指します。
次に2の【密着型】は定員29人以下の【小規模特別養護老人ホーム】を指します。
密着型の中でも【単独型】と呼ばれる施設は共有リビングが建物内中心にあり、それを囲むように個室が設定されている施設を言いますが、規模で言えば一般家庭+α程度です。
また、広域型の近隣に密着型を有している場合は【サテライト型】と呼ばれます。
広域型を本体施設とした場合、そこから20分圏内にある為、緊急時対応や夜間対応も迅速に行う事が可能です。
どちらも施設に近い場所に居住区を持っていないと入居は出来ません。
最期の【サポート型】は、主に在宅介護をしている方を対象とした24時間365日対応可能な施設を指します。
要介護1から2で今後介護度が高くなりそうな方や、3以上で在宅介護をされている方が利用対象者となります。
設備
特別養護老人ホームは介護設備を完備しています。
これは法令で定められている為、完備していない場合には特別養護老人ホームを名乗ることはできません。
この法令では厳しく入居対象者へのサービス提供内容が定められており
- 居室定員4人以下で、一人当たりの面積は65平方メートル以上、ベットの設置、棚や金庫の設置、ナースコールなどの設置を行う事
- 浴槽は介護を有する人に最適な機器を導入する事
- トイレは介護を有する人に最適なものを選び、ブザーや常夜灯の設置を行う事
- 臨床検査設備を有する医務室を設け、入居者に必要な医薬品と機器を設置・保管する事
- 廊下幅は8m以上、常夜灯と手すりを整備する事
- 階段には手すりを整備する事
など、複数にわたって細かく整備されています。
民間企業では一部法令化されている項目もあり、あくまで企業努力として整備関連は行う場合が多いですが、こちらは公的な施設となりますので、安心して入居する事ができるでしょう。
利用できるサービス
介護者を受け入れている為、利用可能なサービスは幅広くなっています。
- 食事…栄養バランスに配慮した食事が提供され、個々の咀嚼力や飲み込む力の度合いによって硬さを変更して頂けます。
- 入浴…専門機器を利用し、少ない介助者でも安心して入浴が可能です。
- 健康管理…毎日の検温、体調管理をおこなって頂けます。場合によっては医師の巡回や看護師への健康相談も可能です。
- リハビリ…施設によってリハビリ施設を利用でき、在宅介護へ向けた準備をする事ができます。
- 排泄…専門機器を使用し、介護者一人でも安心して行う事ができます。また、介護士なども専門知識豊富な為、在宅での排泄手順などを相談することも可能です。
- 生活サポート…買い物の付き添いや生活相談などをお願いする事ができます。
- レクリエーション…定期的に行われるイベントです。楽器の演奏会やお花見、園児との交流など施設により幅広く行われますが、民間施設ほど回数は多くはありません。
居室の種類
特別養護老人ホームの居室は大きく分けて4つのタイプに分類されます。
個室
一部屋ごとに分けて管理されている部屋を言います。
向かい側の部屋の前には通路が設定されている事が多く、一般的な部屋の作りと一緒です。
ユニット型個室
部屋の中央に共有スペースであるリビングを設定し、リビングを囲うように個室が配置されている施設がこれに当てはまります。
全ての個室は壁とドアで仕切られている為、プライバシーも保護されながら介護士の巡回も行いやすく、健康管理面から見ても安心できる作りとなります。
10人以下の入居者で構成される小規模介護施設には多く見られるタイプです。
ユニット型準個室
こちらはユニット型個室の壁やドアがないと認識してください。
代わりに簡易のパーテーションやカーテンで仕切られています。
ユニット型個室よりもプライバシー保護は緩い形になりますが、共用リビングまでの距離が短く、足腰の悪い型には便利な作りとなっています。
大型の施設に多く採用されており、10人程度を1つねグループ=1ユニットとして介護士がお互いをカバーしながらの介護を行います。
多床室
一部屋に複数の入居者が同居し、間仕切りは棚 簡易的な棚やパーテーションなどの可動できる家具で行われています。
介護施設でよくある【夫婦一部屋】とはいかず、プライバシー確保はなかなか難しい面がありますが、同じ趣味を持つ方や気の合う方が近くにいれば、それだけで安心感が高くなり、生活の支えとしても重要になってくるので、認知症者などにはリハビリも兼ねる事ができるのではないでしょうか。
費用
特別養護老人ホームの主な費用は【施設料】【施設サービス利用料】【食費】【日用品】となります。
まず前提として、特別養護老人ホームは民間企業で発生する【入居一時金】はありません。
この事から入居前に多額の費用は発生せず、その分を入居にかかる日用品購入などにあてられます。
【施設料】とは、一般的にいう家賃だと思っていただいていいと思います。
各地方自治体で定められた【利用者負担段階】により全5段階に分類され、4を一般、1を世帯全員が市区町村民税非課税であり、老齢福祉年金受給者または生活保護者を指します。
例えば入居者自身が第四段階の一般に分類され、ユニット型の個室に入居する場合には月額60,180円の費用を負担することになりますが、同じ条件で1の分類をされている=収入面に不安があるまたは生活保護受給者の場合には24,600円となります。
【施設サービス利用料】とは、施設により異なる部屋の作りと介護度により変動します。
1日あたりの自己負担額はおおよそ
- 要介護1…557円〜636円
- 要介護2…625円〜703円
- 要介護3…695円〜776円
- 要介護4…763円〜843円
- 要介護5…829円〜910円
とされています。
【食費】は各施設により異なりますが、一食当たり500円〜700円前後の施設が多く、月当たり5万円〜6万円という事です。
民間施設の多くは食費で8万円から10万円以上の施設も多い為、低価格である事がわかります。
【日用品】には、普段使用する洗剤やおむつ費用が含まれます。
一般的に日用品は全額自己負担とされており、民間施設入居時に発生する入居一時金を支払う事で一部購入費用に充てる事ができる場合があります。
介護・医療体制
特別養護老人ホームは介護体制が非常に優れているのも特徴です。
入居者が全員要介護3以上の方となる為、専門の介護士や看護師による24時間介護が可能となります。
一方、医療体制は施設により多少変動してきます。
都市部や県庁所在地付近、大きな市と隣接している場合には大型医療機関と連携が取れますが、地方の場合はそうもいかず、なかなか入居者の希望する医療機関が受診できない場合があります。
専門的な医療を必要とする場合には、施設選択の段階で受診可能な医療機関が近隣にあるかどうかを確認しておく必要があります。
おすすめの特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム松の浦湯治の郷(滋賀県大津市)
地下1300mから汲み上げる天然温泉で身体を癒すことが出来る全国でも珍しい施設です。
高齢になるにつれて低下していく免疫力も高めることができ、施設内には地域の方と交流できる足湯もあります。
食事は毎日新鮮な食材を利用し、見た目も美しく味も美味しいご飯を利用者の咀嚼力や飲み込む力毎の硬さ変更も可能です。
関西屈指の温泉付き特別養護老人ホームですので、利用希望者も多くなってきています。
医者や歯科医の巡回、医療連携体制もしっかりと整っているので【終の住処】として選択される方も多いようです。
サテライト いこいの里(大阪府枚方市)
医療法人が運営しているこちらの施設も人気が高くなっています。
サテライトいこいの里は中村病院と中村クリニックの大小医療機関との提携を行い、入居者の健康管理を徹底している特徴をもつ施設です。
毎日の巡回時には健康相談も出来るので、入居者家族からみても安心して御預け出来るのではないでしょうか。
全29の個室は生活がしやすい作りになっており、長期入居の方には日々の生活をゆったりと、短期入居の方には在宅介護への確実な一歩を歩ませることができます。
最後に
他の施設よりも入居者同士の交流に重点をおいているのも特別養護老人ホームの特徴です。
それは、入居者同士が互いを理解し、関係性を深めることで日々の生活の活力となるように工夫されているからでしょう。
費用も低価格で、介護体制もしっかりしている施設が多いので、在宅介護をしているご家族の方から見ても強い見方となってくれます。